scenery 1 夕陽と観覧車と彼女
全てが嫌になった中学生のあの頃。僕は確かに沈んでいた。
観覧車で見た夕陽を心に焼き付け、恐らく少しは成長できた。
――だから、告白できた。
夕暮れの観覧車。そこで交わした優しい接吻。
そこには確かに幸せがあった。
「ねぇ、どうして私を好きになってくれたの?」
「君が、君だったからかな」
scenery 2 星の祈る二つの想い
穏やかな日常がずっと続くと思っていた。
私と彼と。夫婦でいる幸せ。
それが続くと思っていた。
――けれど現実は残酷で。
少しだけでいい。もう少し長くいられたら。
星へ願うには、大きすぎる願い。
些細な幸せすらも、星には届かない。
「星への願いだって、実はこっそり叶えられていたりするかもしれないよ?」
「僕の体が元通り元気になれば信じるかもしれないけど」
scenery 3 落ちた線香花火
恋愛は花火に似ていると彼女は言った。
その時、僕たちの恋はもうすぐ消えるんだと何となく気づいた。
彼女と二人で出かける夏祭り。どこかぎこちない雰囲気。
―-彼女の笑顔が切なくて。
僕は泣く事はなかった。
ただ、心に空いた穴へ色んな言い訳をしてみるだけ。
「ごめんなさい、理由、上手く言えないわ。君が嫌いになったワケじゃない」
「笑ってくれよ。じゃないと、折角、笑ってた今日の思い出が泣き顔になっちゃう」
scenery 0.34 夏の夜 淡い夢
蛍の海は幻想的で、そこで出会った二人は運命的で。
涼しい夏の夜は、少しだけ少年を高揚させた。
―-それは淡い夏の夢
彼が抱いた初恋は、緩い夜風に吹かれていく。
いずれまた思い出す。遠い日の思い出として。
「ん? どうしたの? 黙り込んじゃって」
「その……、お姉ちゃんが、すごく、すごく可愛かったから……」
scenery 4 新しい花
なんとなく行った映画館。
そこで僕は涙する。映画の中の風景を、少しだけ僕の失恋と重ねたから。
そこで出会う一人の女性。彼女に惹かれる自分に気づいた。
―-出会いはいつも突然で。
やがて恋人になる僕と彼女。
失恋を乗り越えて少し大きくなれた、そんな瞬間。
「そうですね、良い奴でしたよ。素敵な思い出も貰いました」
「良いですね、そういうの。私にはありませんから……」
scenery 5 抜け落ちた世界
目覚めた時には全て抜け落ちていた。
両親も友人も、思い出も。
―-けれど、前を向いて歩こうと思えた
偶然出会った彼との会話。
何気ないその会話に、私は勇気を貰えた。
彼と過ごす時間が私は愛しかった。
「そ、それじゃあ……」
「もちろん、喜んで。これからもよろしくお願いします」
scenery 6 僕たちのこいいろ
彼女と二人で田舎へと向かう。
付き合い始めて四年が過ぎた、ある夏の日。
僕はある決意を胸に電車に揺られていた。
――彼女と二人で歩んでいこう。
夜の川辺で起きた一つの奇蹟。
宵闇の中で交わす接吻。
僕たちの恋色は確かに濃い色で光っていた。
「私はその子の代わり?」
「代わりじゃないよ。お前が一番なんだから」